おはなしの もうふ

 クリスマス期に出会った絵本は何かしら魔法がかっており、手にするだけで作品に不思議な息を吹き込まれるような気がします。『Story Blanket, the』もそのような一冊で、ストーリーの内容とあい重なり心がほかほかしてきました。
 ザラおばあちゃんの住む村は、雪深い山あいにあります。子どもたちはおばあちゃんの大きな古い毛糸の毛布に座り、お話を聞くのが大好きでした。ある日、ザラおばあちゃんは、ニコライが穴の開いた靴をはいていることに気がつきます。そこで、あたたかい靴下を編んであげようと思い立ちますが、その冬は大雪続きで、村のお店には毛糸がこれっぽっちも届いていませんでした。毛糸なしで、どうやって靴下を編むというのでしょう。「こたえは かならず ありますよ」。おばあちゃんが甘いお茶を一杯入れて考えはじめると、三口もすすらないうちに名案が浮かびました。「おはなしもうふの けいとを ほんのすこし ほどいて、ニコライの くつしたを あみましょう!」――。
 困った状況でおばあちゃんがつぶやく"Every question has an answer."「こたえは かならず ありますよ」の一言は、作中、謎を解く場面でのお決まりフレーズです。知恵者のおばあちゃんが発すると、読む側もいっしょに勇気づけられ、元気百倍、力がモリモリ湧き上がってくるから不思議でした。
 ニコライの靴下のお次は、寒そうな身なりをしていた郵便屋さんにマフラーを。薪運びをする学校の先生には手ぶくろを。次々に届けられる贈り主の記されていない贈り物に、村人たちは首をかしげるばかりです。その一方で、ザラおばあちゃんのおはなしもうふは、どんどん小さくなっていきました。
 ふっくらとした日本人形のような人物描写が淡白であるからこそ、ふかふかの毛糸のイメージが鮮やかに浮かび上がり、冬の物語を美しく包み飾ります。
 「こういう絵本、翻訳してみたい」と思わず衝動にかられましたが、すでに日本語版『おはなしのもうふ』(光村教育図書)が出ていました。
 あたたかくて、美しい、すてきな冬の絵本です。おはなし会でも、人気の絵本になりそうですね。

おはなしのもうふ

おはなしのもうふ

  • 作者: フェリーダウルフ,ハリエット・メイサヴィッツ,エレナオドリオゾーラ,Ferida Wolff,Harriet May Savitz,Elena Odriozola,さくまゆみこ
  • 出版社/メーカー: 光村教育図書
  • 発売日: 2008/11
  • メディア: 大型本
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