The Pencil えんぴつくん

 そういえば今日、車の中で、娘がちびた鉛筆を見せてくれたのだった。よって『Pencil』(邦訳『えんぴつくん』)を手にして、たちまち親近感に包まれる。
 絵本では、淋しいえんぴつくんが主人公。でもお絵かきすることでまわりがどんどん賑やかになり、最後はほんのり幸せ色で幕の締まるお話だ。
 アイデアとしてはなんとなく『はろるどとむらさきのくれよん (ミセスこどもの本)』を想起させたけれど、えんぴつは消しゴムで消せる(……絵本では絵の具も消せちゃうのだ……)事実が、二転三転の物語をドラマチックに展開させた。
 えんぴつくんの描いた男の子バンジョーや犬のブルース、猫のミルドレッドが、かなりわがままで笑える。みんな名前を付けてもらいたがり、愛嬌いっぱいで個性的。自由自在にストーリーが動き出し、囚われない子どもらしい視点が読者に受けるだろう。色つけ絵筆のキティちゃんが登場したり、前述の消しゴムどんが活躍したり。題材は身近で小さな存在でも、けっこうな冒険が繰り広げられる。日常のアドベンチャーは、もっとも心地よいエンタテイメント……みたいな読後感だった。日本語で読むと、どんな感じ方になるだろう。 
 えんぴつらしい描線と消しゴムらしい紙の汚し方が味わい深い。これも親しみを与える由縁かな。英国の絵本。
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Pencil

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