The Great Paper Caper 木を切るクマ

 森の光景が少しずつ変わり、ただごとでないと原因を突き止めようとする動物たち。斧で木を切るクマの存在が浮かび上がったが、いったい何のために木を切るのか。オリバー・ジェファーズの新作絵本『The Great Paper Caper』には、遠まわしに、木を切り森を破壊し続けた人間の功罪が描かれる。
 折りしも「今の資本主義はもう、やめてくれ:日経ビジネスオンライン」を読んだばかり。森の木を伐採して滅んだギリシャ文明、加えて多神教から一神教となり「人間の英知と技術力が自然を克服できる」と人間至上で森林を開き、衰退したローマ文明。学者曰く、取り返しのつかない地球環境破壊はもちろんのこと、現在の経済破綻も、すべては森林消失がもたらした帰結という。キリスト教北ヨーロッパ文明を支えた一方で、破壊活動も同時に行使していた事実は、自分にとり痛いところだ。産業革命も、情報革命も、歴史がなければ生まれなかっただろうし、前者には子どもへの尊厳の芽生えや絵本の存在も含まれる。存在理由を否定され、しょんぼり。
 多神教社会で人々が森林を大切にしていたら、今頃世界はどうなっていたのだろう。森の木を切り倒した罪滅ぼしは、今からだと手遅れなのだろうか。
 沈んだ気持ちでクマの行動を見ると、かなりやるせない。楊枝のような棒線2本足で支える無表情キャラクターの容貌が寓話をさらに寓話に仕立て上げ、人間の利潤のみを追求した愚行を浮き立たせる。クマはクマで贖罪として、お茶目に木を植えはじめるけれど……。
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The Great Paper Caper

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