Doo-Wop Pop 音、リズム、アカペラ

 『Doo-Wop Pop』は、引っ込み思案で恥ずかしがりやの生徒5人が、学校のカストディアンのおじさんからアカペラの楽しさを教えてもらう絵本。
 耳を澄ましてごらん。聴こえるものを、すべて声に出し、リズムにしてみよう。その昔、いかしたスーツをまといスポットライトのまぶしいステージに立っていたというサールさんから、子どもたちは放課後、特訓を受ける。最初は戸惑い気味の彼らだったけれど、何でもリズムで表現し歌い出すおじさんの情熱が乗り移り、遂に「ドゥーワップ」の魅力にはまり出す。このあたりは、ブラック・カルチャーならではのシーン。
 いいお話だった。でも、自分のまわりとはだいぶ異なる光景だ。現実には美しい和声のアカペラに魅せられるより、世の中への不満を叫び快楽に走るラップのような音楽に挑発され、不健康な悪循環を繰り返す子どもたちが断然多いと感じてしまう。
 でも、あながちそうではないのかも。ただ単に、触れたことがないからなのかもしれない。魂を深く揺さぶられる真実に出会ったら、彼らだってたちまち虜になるだろう。自分の色眼鏡を反省。では、誰がその真実や情熱を示してあげるのか。自分は昨年よりはマシとはいえ、やはり疲れきっていて、なんだかヘトヘトなのだけれど。
 コリアーのコラージュ使いのイラストが、いつもながら冴えていた。
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Doo-Wop Pop

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