We're All in the Same Boat ノアの箱舟ABC

 『We're All in the Same Boat』は、ノアさんの作った箱舟に動物たちが乗り込んで、彼らの名称と行動を織り込みながら愉快な頭韻でABCを紹介する絵本です。でも、小さな子ども向けというよりも、就学以上の子どもたちにこそ向く内容かもしれません。そこにはプラスαの人生指南がユーモラスに表現されていて、個人的に少しばかり政治の世界を想起しました。
 冒頭は例によって雨の場面。一週間、一か月がたっても止む気配のない雨に、動物たちはイライラして欲求不満顔を見せています。

The ants were antsy.
The bees were bored.
The camels were complaining.
The dogs were demanding.
The elephants were enraged....

 すべてをノアさんのせいにしたところで、彼がぴしゃりと一言。"We're all in the same boat!"――。一瞬しんと静まり返った後、動物たちは心を入れ替えたのか、打って変わって違う行動を取り始めました。

The ants apologized and the bees behaved.
The camels were cooperative, the dogs were diligent, and the elephants were enthusiastic....

 ここは、リーダーの「喝!」って大事だなあ、と素直に実感した場面。聞く耳を持っていた動物たちの資質も要因なのでしょうけれど。後半はあちこちで笑顔が見え、文句の渦巻いていた舟の中の空気がどんどん変わっていきます。
 作者はユダヤ教のラビとのこと。よって、ノアさんの一言に込めたメッセージで健全な市民生活のヒントを説いているようにも思えました。文句ばかりでは、始まらないよ……と。リーダーの舵取りで、舟はいかようにも進むのです。
 おとぼけ顔の動物たちが、子どもに受けそうです。画家は地元在住。これから注目してみましょう。
amazon:Zachary Shapiro
amazon:Jack E. Davis

We're All in the Same Boat

We're All in the Same Boat