The Lion's Share: A Tale of Halving Cake and Eating it, Too 動物たちのわり算、かけ算、分数物語

 熟語"the lion's share"は「いちばん良い(大きい)分け前、うまい汁」(リーダーズ英和辞典)の意味で、イソップ物語の寓話が素になっている。エピソードにより内容が少し変わるのだけれど、いずれも大意は「力あるものがもっとも大きな取り分を奪う」ということだ。でも、この『The Lion's Share』は、まったくユニークな展開を見せてくれた。算数の先生、大喜びの内容ではないか。
 百獣の王ライオンは毎年、特別な晩餐会を開いている。初めて招待されたアリは胸をときめかせ、同時に少々緊張しながら開始時刻きっかりに会場を訪れた。しかし、コガネムシやカエル、インコ、イノシシ、オオガメ、ゴリラ、カバ、ゾウは、みなダラダラと大遅刻。しかも、食事のマナーが滅茶苦茶でアリはあまりの粗野な態度にショックを受ける。それでも王さまライオンはおかまいなく、食後のデザートに大きな正方形のケーキをふるまった。ここで、ゾウがまず半分(1/2)いただき、次にカバがそれならわたしも半分ということでまた半分(1/4)、ゴリラも半分(1/8)……最後にアリは、1/256分のケーキをいただくが、小さすぎて半分に分けられない。「おれたちはみんな、半分ずつ分け前を与えたんだぜ」と軽蔑の眼差しを受けたアリは、「王さま、明日、わたしはおばあちゃんから教えてもらった特製ケーキを焼いてお持ちいたします」と約束する。すると、差をつけられたくない動物たちは、口々に自分たちもケーキを持参すると言い立てる。まずコガネムシが、それならわたしはケーキを2つ、カエルがその倍のケーキ4つ、インコがさらに倍のケーキ8つ……という具合に倍返しを豪語した。ということは、ゾウは一晩で256のケーキを焼かなければならないのだけれど、この光景がこっけいで、品格とは何ぞやと賢く教えを説くのである。
 算数にも使えるけれど、イソップ並みの人生指南書でもあった。動物たちの個性が見どころかな。
amazon:Matthew McElligott

The Lion's Share

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