Bring Me Some Apples and I'll Make You a Pie: A Story About Edna Lewis 果樹園と畑に囲まれた楽園

 自然の恵みを収穫し、旬の野菜・果物を食卓に運ぶ「食」の原点を語り続けた料理家エドナ・ルイス(1916-1992)。絵本『Bring Me Some Apples and I'll Make You a Pie: A Story About Edna Lewis』で、少女期の暮らしぶりを知り、ひたむきな食へのこだわりに心底納得でした。解放された奴隷たちが築いたバージニア州フリータウンの農業コミュニティで、彼女は地上の楽園を体験していたのです。
 ホイッパーウィルヨタカが春の到来を告げると、エドナたちは野いちごの収穫に繰り出します。季節が夏へと移ろう頃には、野草摘み、蜂蜜採りが始まり、本格的に夏が訪れるとブラックベリー、桃、トマト、スイカ、とうもろこし、インゲン豆、ブドウの採集に追われました。甘酸っぱいリンゴが実る秋を迎えると、木の実のピーカン拾いです。こうして一家は冬に向けた保存食の準備を完了させ、豊かな恵みの季節に感謝するのでした。
 11月、収穫祭のお祝いで食卓につく人々の満ち足りた表情が忘れられません。人の生きる喜びがここに在るのだと、春、夏、秋の風景を巡り、まっすぐに教えてもらいました。でも、冬の存在も大切なのですね。「冬がなければ、春は来ないからね」とは、お母さんのことば。静かな地中でゆっくりと生命再来の準備をしなければ、春の芽吹きは訪れないのですから。土から距離を置いた暮らしを送っていると、当たり前のことが見えにくくなってきます。絵本をめくる一ページごとに畑、果樹、緑が愛しくなり、食の大切さがあらためてくっきりと浮かび上がりました。うちのリンゴ、サクランボ、今年も豊作だといいなと、思わず前庭を見上げてしまったり。
 作者は過去にお料理本2冊を執筆しているフード・ライターですが、画家でもあるとのこと。透明水彩が美しく、感心していました。巻末にエドナ・ルイスのレシピ5つ(ストロベリー・ショートケーキ、コーン・プディング、アップル・クリスプ、ピーカン・ドロップス、ナットバター・スクエア)が紹介されています。もちろんどれも、とびきり美味しそうです。
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Bring Me Some Apples and I'll Make You a Pie: A Story About Edna Lewis

Bring Me Some Apples and I'll Make You a Pie: A Story About Edna Lewis


エドナ・ルイスのお料理本4冊