Tsunami! ラフカディオ・ハーン原作"A Living God"から

 『Tsunami! (Rise and Shine)』は、発売当初から非常に話題に上っていた絵本です。日系人作家キミコ・カジカワと実力派画家エド・ヤングが組み、ラフカディオ・ハーン原作 "A Living God"(Gleanings in Buddha-fields,1897)*1を迫真に満ちた絵本に仕立てました。
 評判どおり、ヤングの実写を織り混ぜたちぎり絵、切り絵のコラージュは見るものを圧倒させます。特に表紙。お祭りの光景は小さな港町にしては雅の情趣が漂い、少々華やか過ぎる印象を持ったのですが、それでもやはり大胆な構図が圧倒的な美を放っています。そこに大自然の脅威と、主人公の自己犠牲の物語が続くのですから、読者はもう息の呑まずにはいられません。
 島の小高い丘で暮らしていたおじいさんは、お祭りの日、津波の到来を察します。眼下には、怒涛の勢いで押し寄せようとしている不気味な波に気づかない村人たちが見えました。一世一代の危機を、彼らにどう伝えたらいいでしょう。おじいさんはとっさに……。
 作者の献辞は、祖父モトスケ・カジカワに宛てられています。"Ojiisan" "Nobori" "taimatsu" "taihen-da!" "Kita!"など、要所に日本語表現が効果的に用いられ、民話の持つ風情が巧みにかもし出されていました。
 ときに過ぎた日本美化を指摘されるハーンですが、実話をもとにした物語は人々の胸を打つことでしょう。
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Tsunami! (Rise and Shine)

Tsunami! (Rise and Shine)

*1:参照:中井常蔵作「稲むらの火」、ハーン原作は「仏陀の国の落穂拾い」より「生ける神」