Hurry Up and Slow Down ウサギとカメのかわいらしいお話

 冬の翌日は、ふたたび春の一日でした。絵本のページをめくるように、春、冬、春の順番で絵巻を見せてもらったようで、自然の気まぐれにただただ目を瞬かせるばかり。昨日の銀世界は夢のように消え去り、さわやかな青空の下、光る風が吹き抜けていきます。
 そんな晴れやかな日に読んだ絵本は、今日に相応しい『Hurry Up and Slow Down』。描かれる風景は春というより夏なのでしょうけれど。表紙の黄色と黄緑色があたたかな陽光を想起させてくれ、草の匂いが無性に恋しくなってきました。表紙をめくった見返しには、たんぽぽの綿毛がふわふわ飛び交い、あおむし、ちょうちょう、くも、かたつむり、はち、かえるといった小さな生き物たちが、自然の目覚めを高らかにたたえています。
 登場キャラクターは、いつも走り回ってばかりのウサギくんと、のんびりわが道を行くカメさんの2匹。ぴょんぴょんと急いでじっとしていられない性格と、ゆっくり慎重にものごとを進める性格、両者の差異が描写のほとんどを占めます。でも、夜のおやすみの時間になるとちょっと様子が変わりますよ……。この場面のやりとりが、とても身近で、「そう、そう、そのとおり……」と首肯の連続。いっしょに本を読む姿がたまらなくかわいらしく、ほっこりと作品の魅力を確認しました。
 彼らの姿は、小さな読者にとっても親近感たっぷりでしょう。お母さんはきっと、自分の子どもの姿をいずれかの性格と重ね合わせているはず。うちは息子がウサギくん、娘がカメさんでしょうか。彼女は最近、ウサギ化していますが。
 読み終えて、夏の裏庭が非常に恋しくなりました。今年も苺栽培したいなと気持ちがはやります。緑豊かなお庭の一角を描く作品は、やはり庭園の国、英国の絵本でした。ガーデニングの季節が待ち遠しくなる一冊かもしれません。
 右サイドバーのくるくるウィジェットも、「雪の絵本棚」から「春の絵本棚」に並べ替えてみました。
amazon:Layn Marlow

Hurry Up and Slow Down

Hurry Up and Slow Down