Splash!:A Little Book about Bouncing Back 落ち込んだときに読む絵本

 好評のデビュー作"Bloom: A Little Book About Finding Love"と最新作"Peep!: A Little Book About Taking a Leap"に比べると、少々地味な"Splash!: A Little Book About Bouncing Back"。しかし、読んでみたら、納得する箇所が多く、意外に個人的なお気に入りになっていました。
 元気のないアザラシのスプラッシュは、何もする気が起こりません。泳ごうよ! 氷山まで競争しようよ!……と友だちに誘われても気持ちが沈み、果てはみんなの笑いものにまでなってしまいます。悲しく落ち込んだスプラッシュは、「なんで ぼくが こんな思いをしなくちゃいけないの?」と嘆きました。
 さて、スプラッシュはこの後、どうするでしょう。実は、ここから以降、どん底からほんの少しずつ浮上するヒントが描かれていきます。気になるその答えは――、「体を動かすこと」。
 太陽だと勘違いした黄色い物体を空に持ち上げようと、スプラッシュは黄色いボールを何度も空に放り返します。ボイーン、ボイーン、ボイーン――ボールを打つ身体リズムに引き込まれていく感覚は、自分の身にも覚えがあります。運動を繰り返すうちに、いつの間にか心も体も元気を飛び戻していく前向き姿勢。これさえつかめたら、重く沈み込んでいても、ほんの少し体を動かしてみることをきっかけに、何となく前進でき、そのうち自然に発進できるようになるのですね。
 黄色いボールを太陽に仕立てる設定が、少々強引かもしれません。でも、落ち込んだ気持ちをくつがえしていく過程は、見ているだけで心が晴れ晴れしました。「ボイーン」の反復音に引かれながら、身体の心地よさを再確認。3冊の中で、もっともビタミン剤的なパワーを発揮する作品です。
BLOOM! A Little Book about Finding Love バレンタインにぴったりの小粋でかわいいこぶたの恋物語 - 絵本手帖
Peep!: A Little Book about Taking a Leap 卒業生に贈るひよこの絵本 - 絵本手帖
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Splash!: A Little Book About Bouncing Back

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