フローラのにわ

 "There are fairies at the bottom of the garden"('Fairies' by Rose Fyleman)……お庭の深みには妖精たちがすんでいるので、はっとするようなことがおきてもまったく不思議ではない……そうです、そうです。お庭には妖精たちが棲んでいます。春の目覚めに触れてみると、確かにそう感じずにはいられない光のまばゆさに包まれます。
 ディーグマンの最新作は『フローラのにわ (世界傑作絵本シリーズ・スウェーデンの絵本)』。りんごちゃんの絵本"Our Apple Tree"(邦訳は『りんごのえほん』)を知ったときにどこかのインタビューで「最新作は、ブルーベリーの絵本」と語っていたことを思い出したのですが、ブルーベリーの描かれた表紙からして、もしやこちらが「その絵本」なのかもしれません。青いお帽子に青いコート――彼女はきっと、ブルーベリーの妖精なのでしょう。個人的には、りんごちゃんの絵本で見たような、厚塗りが好みです。でも、ここ最近見せているさわやかな水彩画も、もちろんとろけるように可愛らしく、清楚な魅力をたたえています。
 主人公は、小さなフローラ。たったひとりで、青い木のとびらのある家に暮らしています。野の草花に囲まれながら、かえるやハリネズミなどなかよしの動物たちといっしょに楽しく日々を過ごしていました。でも同時に、フローラは、冷たい雨の日にもいっしょにおしゃべりできる友だちが欲しいな……とも思い始めていました。

あたしの にわに さいている、
リネアのはなに よく にた おんなのこ。
みどりの ぼうしを かぶり、
ピンクの ワンピースを きている おんなのこ。


そんな ともだちが いれば、 あめの ひだって、
ふたりで うたを うたったり、
だいじな ひみつを ささやきあったりできるのに……。
そして あめが やんだら、きの うえに すわって、
もっと おしゃべりできるのに……。

 フローラは、お友だちに出会えるでしょうか。
 タンポポワスレナグサツマトリソウ、キバナノクリンザクラ、フランスギク、ブルーベリー、ノイチゴ、スズラン、ホタルブクロ、リネア――の草花を背景に、カエル、ハリネズミ、さかな、カタツムリ、アリ、ツグミテントウムシマルハナバチたちがしあわせそうに描かれる、繊細で可憐な絵本です。
 人物の描き方がほんの少し少女漫画風に見えるページがあり、個人的にこの傾向に関してはデビュー作で見せたぽってりとしたお人形のような描写に戻って欲しいなと願ってしまいます。それでも、淡い色合いの豊かな自然描写は、やはりため息もの。ディーグマン作品、次がまた楽しみです。
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フローラのにわ (世界傑作絵本シリーズ・スウェーデンの絵本)

フローラのにわ (世界傑作絵本シリーズ・スウェーデンの絵本)