The Composer is Dead 熱烈クラシック音楽ファンのレモニー・スニケットと新進気鋭の作曲家ナサニエル・ストゥーキーによるオーケストラへの誘い

 ベイエリアトロントなど、すでに語り付きの楽曲'The Composer is Dead'で魅了されたファンには待望の絵本版"The Composer Is Dead (Book & CD)"がお目見えです。作者スニケット自らの語りと初演を果たしたサンフランシスコ交響楽団演奏のCD付き。この愉快なオーケストラ入門が、うちにもやってきました。
 レモニー・スニケットは、大の交響楽ファンだったのですね。'You Tube'で告白しているように、まずベートーヴェンにはまり、次にバッハ、そしてマーラーショスタコーヴィッチの経路でとりこになったということで、そんなクラシック音楽への熱い想いが、初心者、愛好者向けのオーケストラ入門制作の原動力となったようです。(それにしてもスニケットは、お笑い芸人のよう。こんなにおもしろい人物だとは知りませんでした。)
 物語はある日突然、偉大な作曲家が死を迎え、不審に思った探偵が犯人探しに乗り出すところから始まります。「犯人は絶対にオーケストラの中にいるはず」。そう推理した探偵は、楽器ごとにアリバイについて尋ねていきました。こうして、職務尋問の中で、弦楽器、吹奏楽器、金管楽器、打楽器など、各楽器の特徴や音色が、スニケット特有の辛らつなユーモアとともに紹介されていきます。
 作曲は将来が嘱望される、地元サンフランシスコ出身の若手音楽家ストゥーキー。ヨーロッパではケント・ナガノの下で修行を積み、指揮者、作曲者として地元では大いに期待されているようです。
 インタビューで作者2人は、プロコフィエフの「ピーターとおおかみ」にも言及していました。こちらはもうクラシック中のクラシック。永遠に演奏されていくでしょう。でも、本作品も新時代のオーケストラ入門として米国を中心に人気を博すと思います。うーん、辛口すぎるところもあるのですけれど(ビオラのところなど)、それも大人なら許せる範囲でしょう。
 クラシックファンだけでなくスニケットファンの期待も決して裏切らない、内容の濃い、笑える絵本です。うちの子どもたちには、大受けでした。

 スニケット独特の乾いた辛いユーモアにぴったりのイラストをつけたのはカーソン・エリスです。これが、なかなか見事なでき。2人の著名人物の良さをさらに引き立てる、クラシックの香りがたっぷり漂う絵です。チューバとハープの過ごした部屋の描写が、文化融合の進む街っぽくってすてき。
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The Composer Is Dead (Book & CD)

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