オークとなかまたち Oak & Company

 やわらかな風、光る空、春到来――。しかし、明日から週末の復活祭にかけては愚図り気味の空模様ということで、あたりが明るいうちに春らしい絵本を開こうと思った。
 『オークとなかまたち (講談社の翻訳絵本)は表紙を目にするだけで、自分の体が大地に染みこんでいくような感覚を抱く。地中に深く根を広げる樫の木に、自らをゆだねるような気持ちにもなっていたりする。
 カケスの落としていった小さなドングリは幸運にも豊かな土地で芽を出し、茨のやぶのおかげで外敵に邪魔されず、やがて大木に育ってゆく。何という豊かさ、そして、厳しさよ。壮大な自然の営みを語る絵本には、樹齢300年近くの樫の木の潔い真実が描かれる。
 水辺のオークのまわりに生態系を作る昆虫、動物の姿が生き生きとしていて、とびきりかわいらしい。帯に書いてあった「町」=「ひとつの社会」が、生ける物を愛しむ光景となり、しみじみと見る者の胸に入り込んでくるのだ。

<水辺のオーク>はぐんぐん育ち、対の幹を持つめずらしい木に育っていった。枝をはり、葉をしげらせて、大きく育てば育つほど、生き物たちが集まってくる。……蝶々が、きらきら光る葉っぱのあいだを飛びまわり、キツツキは、苔のなかの虫をさがして餌にする。小鳥たちが、生いしげる葉むらの奥に巣をつくる。<水辺のオーク>は、いまや、ひとつの「町」だった。ひとつの社会といってもいい。……

 このあたりにもオークがたくさん見られ、わたしたちも季節を通じて木々の恩恵を受けている。本書を読んで、さらに深く「いのちはみんな つながっている」ことを心に刻んだ。
 原書は絶版の様子。図書館でも貸し出し不可の絵本だったので、日本語で手にしたときは宝物を手に入れたような気分だった。細密画がすばらしく、眺めてはため息。自分もいつかこのような絵が描けたらと憧れる。
amazon:Richard Mabey
amazon:Clare Roberts

オークとなかまたち (講談社の翻訳絵本)

オークとなかまたち (講談社の翻訳絵本)