おばけのラーバン

 偶然なのか、どうなのか。
 娘がイースター・ヴィジル(祝日前夜の祈り)の読みの練習をしている箇所はたまたま、旧約聖書からの「乾いた骨の谷」という部分。骨、皮、肉、腱など、結構おどろおどろしい描写がでてきて、ここを指定されたことに驚いていた。
 それと、主人から聞いたこと。木曜日のフィールド・トリップで、百年以上の歴史があるパブリック・マーケットに行ってきた。老朽化した建物には、幽霊話も残っているそうで、実際に目撃した人々の話なども聞けたそうだ。
 娘と主人がハロウィンのような内容の話をしていたところで、わたしは『おばけのラーバン (1978年) (世界のほんやくえほん)』を読んだ。「おはようおひさま」というお城に住む、子どものおばけラーバンのお話だ。お父さんは息子を立派なおばけに育てようとするのだけれど、ラーバンはとてもいじらしくて逆に人間から愛されてしまう。怖いおばけになるための練習の場面に親心が表れ、家族物語の体裁をしている。
 骨、幽霊、おばけ……。
 「幽霊話は、ヨーロッパが多いよ。米国なら圧倒的に東海岸だね」と話す主人の横で、何百年もの歴史がある中世の城を想像し、なんとなく背筋が寒くなった。ラーバンの生まれたスウェーデンにだって、きっといろいろなエピソードが残っているだろう。このような絵本なら可愛らしいけれど、実際は……薄暗く冷たい感覚に慄く。
 寝ずの番で過ごすイースター・ヴィジルには畏敬の念を抱いている。でも、死を扱う意味でイースターには恐怖の色合いも残る。
 かわいらしいオレンジ色の表紙が見つからなかった。よって書影は、最近出たシリーズの中からこちらを。
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ラーバンとラボリーナの「はぁい、いますぐ」 (ラーバンとアンナちゃんのえほん)

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