A Book 創作文のきっかけに

 これは、なかなかおもしろい。"A Book"を読み終えたら、きっと誰もが自分だけのお話作りに取り組みたくなるだろう。
 ここの登場人物たちは本が閉じられている限り闇の中で眠り、読者がページを開いた時点で新しい朝を迎えるという。われわれ読者が本を覗き込み、キャラクターたちが上を見上げる構図が非常に愉快。この三次元的立体構成だけで、ワクワクせずにはいられない。キャラクターたちの家族構成もヘンテコで、ぐぐっと子どもの興味を引きそうだ。
 お父さんは道化師、お母さんは消防士。弟は宇宙飛行士になる夢を抱いていて、みんなそれぞれ、自分のお話の中に入り込んで行った。でも、わたしの「お話」は何? 女の子は一人、自分のお話探しに出かけてゆく。おとぎ話、ミステリー、名作、歴史小説、SFの世界も訪ねたけれど、自分のお話はなかなかみつからない……。
 帰結は小学校の先生がルンルン喜びそう。ほのかに予想はできるけれど、とてもすてきな終り方だ。登場人物と読者の対話が楽しい。
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A Book

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