The Imaginary Garden おじいちゃんとセオのにわ

 新緑がまぶしく揺れ出す6月は、初夏のみずみずしさに包まれる。庭のさくらんぼが美味しそうに色づいてきて、小鳥のさえずりとともに夏のはじまりを告げるのだ。爽快に広がる空を見上げての、この開放感。夏だよー。今日で学校のチューターもおしまい。裏庭が、ずっと恋しかった。ペニーらめんどりたち、スクーターといっしょに、心行くまで庭の自然を楽しむ季節が来る。
 "The Imaginary Garden"は、タイトルを耳にし表紙の無色の建物を見て、不思議にも、ひんやりとした夏の深い庭を想起していた絵本。「イマジナリー・ガーデン」とは、どのような庭なのだろう。
 庭の物語を語るのは、おじいちゃんと小さな女の子セオ。広い庭のあった以前の家と違い、おじいちゃんの引っ越したアパートメントには庭がない。そこでふたりは大きなキャンバスを前に、庭の思い出をひも解きながら、空想の庭を描き始める。冷たい土に覆われた冬の大地に、緑の芽を加え、黄色、紫、白のクロッカス、シラの青い小花、赤い鳥……。次々と色を灯し、庭は見る間に生気をみなぎり始めた。
 布や紙のコラージュと、水彩の筆さばきがほどよく調和した絵本。余白が多いのは、キャンバス地を意識しているからか。おじいちゃんと女の子の、庭への想いを重ねた交流があたたかい。孫といっしょに読みたい絵本かな。実話を元にしていることからも、場面状況が手に取るように浮かんでくる。カナダの絵本。
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The Imaginary Garden

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