Button Up!: Wrinkled Rhymes お洒落な女の子に……お洋服の詩集

 服飾は個性の象徴。古着屋さんや中古品店を訪ね、いったいどんな人がこのデザインを選んだろうかと想いを巡らせる。人間生活に支障を来たさなければ、別に服なんてどうでもいい。しかしながら、心に余裕が生まれると身に付けるものは自分の一部なのだからと、どんな自分が何を求めるのか知りたくなってくる。
 "Button Up!: Wrinkled Rhymes"に集まった詩は、毛糸のセーターや下着、靴ひも、帽子など、体に付ける「物」をテーマにしている。身に付けただけで、もう自分の一部。そういえば、思い出の一部にもなるのである。
 知らない間に娘が開いていたページは、小さくなったTシャツの詩。'Taniya's OLD T-SHIRT'というタイトルで、古いTシャツが「お役目ごめんの理由は自分が縮んだからではなくて、タニヤが大きくなっちゃったから」と嘆く。タニヤは女の子のこぐまで、きっと娘も共感できたのだろう。主人公たちはみな動物だから、この擬人化も洋服や小物に横たわる思い出をよみがえらせる親近感を生み出している。
 ぺトラ・マザーズのイラストが、親しみやすさとともにおとぼけな味を生かして言葉の背景をさり気なく飾る。幼少期の追憶に浸るのもよし、子どもの時間を思い出すのもよし、胸がいっぱいになる温かい詩集だ。服飾とはそういうものでもあったのかと、当たり前のことを諭してもらう。
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