Stories from the Billabong オーストラリア先住民族に伝わる物語集

 自分の知る昔話とは、ほとんどが仏教やキリスト教の教えが根底に流れているものばかりだった。人間の営みが細々と続けられる前近代が舞台である。ところがオーストラリア先住民族に伝わるお話集"Stories from the Billabong"を読み、すべてに圧倒されてしまった。文明や宗教が生まれる以前から人々が語り継いできたというストーリー。広大な自然に囲まれユニークな動物たちと共に生きてきたアボリジニの声が、悠久の時を超えて語りかけてきた。
 最初は、天地創造をしたという虹色の大蛇のお話。どうして虹色なのだろう。また、どうしてヘビなのか。冒頭から、誰かに聞きたいことだらけ。当時の人々がどんな自然観を抱き暮らしを俯瞰していたのか、少々衝撃を受けながら思い描くしかなかった。
 お次は、ダンスの好きな女の子のお話。女子は舞踏が禁じられていた旨が記載されていた。つまりすでに男女差という社会性が存在していたわけだ。魚でもない鳥でもないカモノハシの生き方を象徴的に示したお話には、唸らずにはいられない。太古の時代にあっても、感じることはいっしょなのだと親近感が湧いてくる。
 オーストラリアは、アニミズム、あるいはアニマティズムの超自然観を提示し、信仰していたのか。
 人の手に汚されていない物語の所在を知り、心地よいショックを受けた。
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Stories from the Billabong

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