Jeremy Draws a Monster この「かいじゅうさん」は

 外に一歩も出たことがないジェレミー。家の中でお絵かきをして怪物を描いたのはいいのだけれど、絵から出てきたこいつがなかなかの曲者だった。わがまま言いたい放題で、礼儀もまったくわきまえない。「サンドイッチかいて。はらへったから!」「トースターも。トーストしたのがいいから」……テレビ、ゲーム、電話、ケーキ……。言われるままに絵を描いて、内心辟易するジェレミー。帽子をかぶって外に出て行ってくれたのはよかったけれど、その晩再び戻ってきた。やれやれ……。
 描いた絵が動き出す展開は、絵本でよく見られる手法である。"Jeremy Draws a Monster (Jeremy and the Monster)"が他作品と一線を画する理由は、白い空間を活かしたデザイン性、アート性。加えて、シンプルさに徹したストーリーとキャラクターの象徴性だろうか。最初は不思議な顔をした粗野な怪物と素直な少年ジェレミーのやりとりに魅せられるのだが、そのうち彼らのやりとりには綿密な計画のもとに練られた人生の機微が表出しているのではないかと思えてくる。
 怪物を追い出してジェレミーが得たものは、かけがえのない大切なもの。男の子、モンスターという存在から盲目的に子ども向けだと思っていたのに、大人が読んで胸にじんとくる絵本だった。シンプルで魅力的。一本取られた感じ。いいお話だった。
MOON PLANE 月にとんでいったなら - 絵本手帖
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Jeremy Draws a Monster (Jeremy and the Monster)

Jeremy Draws a Monster (Jeremy and the Monster)