祝いの料理――絵本に出てくる理想の家族

 お節づくりが愉しくてしかたがない。子どもたちが成長するにつれ一品一品に託された思いを汲み取ってくれるようになり、元日の朝は毎年、新しい一年にかける願いが「食」と「会話」を通して昇華していく。
 歳月の中で、豊かな彩りと深い味わいをとどめる日本のお節料理。世界にはもちろんどの文化にも「祝いの料理」が存在するのだけれど、この繊細で単純に美しい食を目の前にすると、極東の地で洗練された自然の色と形と味わいに感謝せずにはいられない。素材を選び、洗い、切り、それぞれの味を生み出していく過程には、無為の時間が重なっている。
 まるで絵本の中に佇んでいるような理想の家族像が料理本祝いの料理』に表されていて、これを読み上げるのもひとつの喜びになっていたりする。それは「お正月」の項の扉に書かれている料理家土井善晴さんの言葉。

お正月
私は家族揃ってよい年を迎えるために、
暮れになると、大忙しで奮闘する両親を見て育ちました。
それが何よりの幸せだったと思います。

 新しい朝を迎えるとすべてのものが輝くようにそこに整っていたという光景、これは『やかまし村のクリスマス (ポプラせかいの絵本)』だったかリンドグレーンのクリスマス絵本にも描かれていたように思う。子どもにとり、これほどの幸せは世界中のどこを探しても見当たらない。土井家の場合は、父親もいっしょになって。母親だけでなく「大忙しで奮闘する両親」という、ふたりのイメージがたまらなく好きだ。この言葉を読み、目頭を熱くするのもここ数年の密かなお決まりごとかな。
 みなさまにとり2010年が輝かしい飛躍の年となりますように。本年も絵本手帖をどうぞよろしくお願いいたします。

祝いの料理

祝いの料理