ヌンヌ

 週末でみなスキーに行ってしまったので、ゆっくりと書こう。
 先週末に届いた『ヌンヌ』がもうとびっきりすてきで、ここ一年で一番好きな絵本になった。帯に書かれた「フィンランドの本屋さんの熱い支援を受け、復刊された名作絵本!」の言葉「名作」に偽りはなし。裏表紙の帯には「『ヌンヌ』は、1965年にフィンランドで刊行されて以来、広く親しまれてきた名作絵本です。ふしぎな物語のおもしろさはもちろんですが、一番の魅力は、イラストレーションの色彩の美しさ、アートワークのすばらしさでしょう。日本の子どもたちにも、美しいフィンランド・デザインを楽しんでいただければ幸いです。」とあった。ふむふむ、どうだろう。わたしの感性だと一番の魅力は、なんといってもお話とキャラクター設定のおもしろさに帰する。読者は誰もが最初の見開きで、この不思議でかわいらしい世界のとりこになっている。もちろん黄色、青、紫と黒を基調にした60年代風のイラスト・デザインもこの上なく洒落ているけれど。とにかく何よりも、子どもたちの大好きなお話の力が宿っているのだ。
 まずそのキャラクターたちだけれども、メインは3人。「ヌンヌは、ねむる人の おてつだいさん。ホップは、おきる人の おてつだいさん。モックは、ちょっぴり へそまがり。三人とも、あちこちで ひっぱりだこです。だれだって、ねむりたいときも、おきたいときも、ちょっと ひねくれたいときも、ありますからね。だから、この三人は、いつでも 大いそがし。」――ね、すてきでしょ。ヌンヌとホップがにこにこしている一方で、モックはぶかぶかの帽子とがぼがぼのコートに身をすくめながらきょろりとした目をのぞかせているだけ。笑顔が見えないので、子どもは「おや?」と、ずっと注目することになる。ひねくれ屋さんというのが、気にかかるところだろう。
 さてさてお話は、忙しくてもほのぼのとしている3人の様子を描写してゆく。あくびあめ、きれいなたまごを産む太った鳥へプスケプス、ゆめのハエなど、このお話ならではのファンタジーを語り、たっぷり楽しませてもらった後、3人はたいせつなお仕事のためにプリッリはかせのところへ、いざ! このプリッリはかせのいでたちがまたとっても愉快で、もじゃもじゃしたひげの先っちょがどこにあるかわからないくらい長いひげをお持ちの方なのだった。そうして最後には、すやすや穏やかに寝息を立てて夢の中へ。平安な眠りに誘う、もっともしあわせな絵本ではないかと感じた。
 そして、ハイチ地震。「死者数が20万人に上る可能性」って、カリブ海の最貧国にあって壊滅的だ。ヌンヌに描かれた平和な世界とは無縁の境地。自分の力ではどうにもできない有事に際し、置かれた状況の不条理を痛感する。特に子どもたち。
 アマゾンは米国、英国が救援金を募っている。植民地にからむ賠償金でハイチを苦しめたフランス(アマゾンだけど)は何もしていない様子。はてなもトップページのどこかにアイコンだけでも置いたほうがいい。でないと救援金の意味がない。
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  • 独語版は、黄緑、赤、紫と黒使用でまた一味違ったイメージ。表紙のイラストは邦訳版には見られないのだけれど、こちらもすてき。

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Nunnu

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 追記:ブクマのコメントにある「ハイチを支援せずに阪神淡路大震災を語るのは変だ」にまったく同感。