Red Sings From Treetops: A Year in Colors 北米の四季の彩り

 先週の木曜日、歌の先生にお寿司をご馳走になった。ちょうどうちから歩いて10分ぐらいのところに、市内でもっとも本格的と誉れ高いお寿司屋さんがある。(このオーナーが偶然にも、わたしと同郷、同級生のおじさんに当たる人と言う事実はまたの機会に触れるとして……)。とにかくネタが新鮮なので、値段は少し張るのだが、ここに来ると天下一品の美味しいお寿司が味わえる。有名な方々がたくさん訪れるからさぞかし敷居の高いお店なのかと思いきや、こじんまりとした店内には前川清氷川きよしの演歌が流れていたりして、すごく庶民的。気さくな雰囲気と絶品のお寿司が人気の理由なのだった。
 先生はもう30年来、こちらの大ファンという常連さん。カウンターに座り、お刺身といっしょに大好きな名酒男山を楽しんでおられた。その席で、シアトルは北米にいながら海の幸と山の幸が両方、存分に堪能できる希少な土地だと頷き合った。ほんとうにそう。そしてまた荒々しく厳しい自然に囲まれた北米にあって、これほど日本の四季に近い気候の巡る土地がほかにあるだろうか、とも。あることにはあるだろうが、わたしにとり歌を詠むとき、シアトルの四季は心強い味方である。
 だから詩の絵本"Red Sings from Treetops: A Year in Colors (Sidman, Joyce)"に出会ったとき、ここにうたわれる色と四季の詩情はまさに自分が詠みたい詩の世界ではないか、と静かに心が叫んでいた。
 広大な北米の四季を、情景豊かに「色」の連想でうたう。もちろんアルファベットなので日本的な四季ではないのだけれど、そこには、ときにやさしく、ときにさびしく、軽やかに、穏やかに、喜ばしく、慎ましやかに、さまざまな表情を見せる「彩り」がある。定型詩でない分、言葉が自由に空間に佇んで心地よさそうにも見えたけれど。
 まず、朗読した。そして次に道化師のような登場人物と背景の自然を追いながら黙読。四季折々の情景が五感に響くイメージと重なり合い、「欠詠に陥りそうなとき必ず開きたい絵本」だと思った。英詩を訳されていた先生に贈りたい絵本でもある。

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Red Sings from Treetops: A Year in Colors (Sidman, Joyce)

Red Sings from Treetops: A Year in Colors (Sidman, Joyce)