Bunny Days ふわふわウサギたちのお話が3つ、でも……

 "Bunny Days"は、表紙を目にした瞬間にイースター用と思いました。デビュー作だった文字なし絵本"Wonder Bear"(『魔法のしろくま』)の、あのクマさんも見えます。はっきりとした色合いと大判の迫力で構成した前作とは異なり、こちらはオレンジ、黄緑、青のトーンを変えて、春らしくやさしい中間色で描かれています。心を高鳴らせてページを開いてみると……。
 収録ストーリーが3話。いずれもヤギさん夫婦がウサギたちに悪気のない迷惑をかけてしまい、それをクマさんが解決する流れでハッピーエンドです。しかし、その不注意な行為が行為なら、その解決方法もあらまあという感じで……うむむ、6匹のウサギたちが生きた動物なのか、ぬいぐるみなのか、途中でわからなくなってきました。ここを「オトボケ」と呼称するのか、「カワイソウ」と指摘するのか、判断は読者に任されそうです。なにしろキャラクターたちの穏やかな印象にもかかわらず、ヤギおじさんに泥を飛ばされたウサギたちが洗濯機で洗われたり、穴ですやすや寝ているところをヤギおばさんの掃除機に吸い込まれたり、庭仕事をするヤギおじさんにしっぽを切り落とされてしまったりと、可愛らしいのかもしれませんが、少々不快にも感じられる場面が続くのですから。
 しっぽの切られるお話は昔からあるので、物語として考えると気にならないかもしれません。でも、しっぽを元に戻す方法が……ミシンで縫いつけ。これは、痛い。というか、くまのプーさんたちのように、最初から彼らはぬいぐるみなのでしょうか。そう考えると洗濯されたり、干されたりで筋が通るかもしれません。
 それにしても、読後の印象は「不思議な」という形容よりは「変わった」が当てはまりそうです。ファンタジーの中に現実的な行為が描かれて、気持ちがいいのか悪いのか、見きわめられない境界線に踏み込んだ作品でしょうか。大変なめに遭遇しているウサギちゃんたちがとにかく無垢で愛らしいため、自分の中ではさらに居心地の悪い痛みが走ります。
 表紙の印象とは正反対に、残念な絵本でした。
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Bunny Days

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