When I Wore My Sailor Suit お船で出発! シュルヴィッツの幼少時代

 "When I Wore My Sailor Suit"は、まだワルシャワに少しの平和が残されていた頃のお話。第二次世界大戦勃発前夜の頃である。
 アパートの階段を上って目指すは、友だち(と言っても大人のおじさん)ミンツさんの部屋。ここにある置き物の帆船に乗り込み、シュルヴィッツ坊やは大海を目指すのだった。島では海賊にも遭遇。肖像画の怖いおじさんがこっちを見てるよ。
 果てしない想像の世界の心地よさよ! 絵本は、ささやかな幸福に暗雲がたちこめようとしていた時代の日常を描き、子どもの夢と遊びをおおらかに謳う。
 思い出をひも解き、穏やかな気持ちで描いた作品だ。水彩にオイルパステルを交え、心の赴くままに筆を運び、色を重ねる。ところどころ画中の置き物や家具の配色、配置にばらつきが見えるのだけれど、その不揃いな光景がかえって親しみとなり胸に染み入る絵だと感じた。
 献辞は母親に。冒頭では「せんちょう、たのしいたびを!」と海に送り出した彼女の朗らかな声が伝わってくるようだった。セーラー服を着て、見立て遊びに熱中するシュルヴィッツ坊やがあどけない。
 前作は父親に、本作は母親に。オマージュの込められた子ども時代の二部作。
How I Learned Geography 画家シュルヴィッツの軌跡 - 絵本手帖
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When I Wore My Sailor Suit

When I Wore My Sailor Suit