Chasing Degas ドガおじさんを追いかけて……フランス印象派を伝える絵本

 アクリルと色鉛筆で描かれる、エスプリあふれるパリの街角。表紙の踊り子を見て「ドガ!」と胸が高鳴り、ページを開いてさらに興奮する。
 開演迫る劇場の舞台裏。画家のドガおじさんは少女たちのリハーサルをピアノの音色に乗りながら素早く描き出した。主人公の少女はイーゼルに立てかけられたドガの絵を見て、ちょっぴり赤面する。だって、そこには左手で背中をかく自分の姿があったのだから。さあ、時間がやってきた。テュテュをつけようと思ったら……あっ! 袋の中にはドガおじさんの絵の具が入っている。これは大変、テュテュの入った袋を間違えて持っていってしまったのだ。そこで彼女はドガおじさんを追いかけて、パリの街に飛び出した。
 途中出会うのは、フランス印象派の発展に貢献した人物や画家ばかり。経済的支援者で自身も画家だったカイユボット、言わずと知れたモネ、ルノワール、画材屋兼画商のタンギーアメリカ人画家カサット……。しかも登場する場面には、彼らの代表的絵画を通して印象派の背景が紹介されていたりで、アート好きにはため息ものの構成である。彼らは「黒」を使わなかったこと、カサットは「青」の画家で知られていたこと、画家たちはこぞってタンギーの店で画材を購入していたことなど。絵がきれいで、印象派のことが学べて、大満足。娘も喜んでいた。
 作者のエヴァ・モンタナリは、イタリア在住のイタリア人画家。ライティング指導の絵本"Show Don't Tell: Secrets of Writing"も、絵に魅せられて購入した絵本(こちらは五感の大切さを訴えるしかけ絵本――しかし、著名な創作文指導者による語彙表現はかなり大人向き)だった。陰影を生かした幻想的で素描風の絵が圧倒的な魅力になっている。芸術を愛する人への贈り物。
amazon:Eva Montanari

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