Hat ぼうし

 公園のベンチに、赤い帽子の忘れ物。「これ、もらってもいい? いろいろあそべるよ!」お母さんに尋ねるやいなや、ヘンリーは帽子でどんなことをしようかと想像を巡らせる。帽子は、ぼくを太陽から守ってくれる。雨をしのいでくれる。ねずみを捕まえるのにもってこい。手品だってできる……。帽子の使い道でワクワクしているヘンリーにお母さんがぽつり提言をした。「でも、このぼうしがなかったらこまる人だっているでしょ?」――。というわけで、今度は赤い帽子のない状況を想像し始める。
 "Hat"は、発想がシンプルで、瞬間芸のような絵本。単純なのでわかりやすく、流れが自然に楽しめる。読者はヘンリーといっしょに空想の世界へ。帽子って楽しいなあ。
 表紙のあっさり度からも予想できたことだけれど、パッと決めて、パッとおしまいにするテンポが小気味よい。ニューヨーク・タイムス紙やニューヨーカー誌で活躍しているイラストレーターということで、都会的な「間」を心得ている感じがした。ポーランド出身ドイツ育ちで、ニューヨーク在住。絵本はこれがデビュー作という。
 なんとなく古めかしい描線が魅力的。数を抑えた配色効果から、60年代−70年代風の懐かしい絵本にも見えてきた。
amazon:Paul Hoppe

Hat

Hat