Birdie's Big-Girl Shoes "Cookie"ママ娘を描く絵本

 ティファニー、バーニーズNYなど、商業デザイン界で活躍するイラストレーター、スジーン・リムの絵本"Birdie's Big-Girl Shoes (Birdie Series)"を読んだ。主人公は、背伸びをしたい小さな女の子。このおしゃまさんの年頃は5−7歳ぐらいだろうか。
 ママのために毎朝アクセサリー、サングラス、香水を選んであげるバーディは、ママの靴をはきたくてうずうずしている。ワニ革パンプス、夏のピープ・トウ、ひも付きサンダル……。ずらりと並んだ靴を見渡せば、クローゼットは、さながら高級デパートの靴売り場のよう。ブーツ、パンプス、ハイヒールが所狭しときらめいていて、バーディはもううっとり。「はいてもいいわよ」とゴー・サインが出たのでいろいろな靴を試してみるけれど……、子どもの足にハイヒールは似合わない。
 「靴」というテーマを、一種のコスチューム遊びと捉えたらいいのかな。帰結は子どもらしくて可愛いけれど、背景はかなりの異色絵本である。エナメル風ショッキングピンクのハイヒールを履く細くて美しいママのふくらはぎなど、もうNYコレクションに登場するモデルの足そのもの。母娘の服装はまさにセレブの趣向で、NY系ハイソな子育て誌"Cookie"の世界である。読み終えた娘が「コマーシャリズムの世界だね」と言っていた。そのとおり。
 ファッション画専攻ということで、水彩のイラストがすでに高級ブランドの広告に見えていた。靴・アクセサリーのデザイナーでもあった作者らしい画風ということなのだけれど、絵本としてはどうだろう。自分の中で、クエスチョンマークが飛び交っている。水彩画自体は、躍動とかときめきが描かれていてすばらしい。よって、靴というイメージが苦しいということなのか。
 というか、これをお洒落なイラストと呼べば、それまでなのだろうけれど。都会的で洗練されていて、プリンセス好きな現代っ子たちにしてみればスポットライトのまぶしい憧れの世界である。つまり今時のお姫さまの暮らしが描かれていると言ったらいいのかな。自然や動物、日々の暮らしを取り上げる、地に近い視点が絵本たるものと認識される中で、お金で築かれた世界を純然と描く心意気が見方によればかっこよく映るということだろう。手中にはない「夢」の一言を通して。
 靴と言えば、娘の学校のハイチ支援のひとつに靴収集があった。ボランティアとしてハイチで活動していた当地出身の女性が地震で亡くなり、彼女のしていた仕事――障害者、養護施設での靴調達――を、彼女に代わって行おうという主旨だった。現地は暑いだろうから、履くとしたらママのサンダルだということになり、寄付はわたしの靴箱から。セールで購入して未使用の黒いサンダル一足、一回使用の赤いサンダル一足、計二足。赤いサンダルはいいのだが、黒いサンダルはドレス用ハイヒールで複雑な思いがした。こんな非実用的な靴、現地で必要とされるだろうか、と。でも、荒んだ生活の中で一足ドレスシューズがあれば、何かの楽しみになるかもしれない……と思い直したり。女性だったら、お洒落心がくすぐられるかもしれない……とか。このサンダルが必要とされるか否かは分からない。仲介をする教会、学校のみなさんに判断を委ねるとして、そんなこんなで、ハイチとニューヨークの景色が重なって、靴の絵本を閉じた。
amazon:Sujean Rim

Birdie's Big-Girl Shoes (Birdie Series)

Birdie's Big-Girl Shoes (Birdie Series)