絵本のゆくえ

 電子書籍時代に突入しても、絵本と児童書は紙のままのはず。出版数は減るけれど、吟味されて世に送り出される作品の質は上がり、「子どもの本」本来の目的に戻るのだろう。
 「ハイテック・ハイタッチ」の意味がここに表れる。つまりテクノロジー至上主義で人間らしさが影を潜めれば潜めるほど、人は逆に自然や人間らしさを求めていく。だからこそ、とくに五感を大切にする子ども時代に、紙の本は不可欠だ。本の色・形を確かめる、重さを知る、指でページをさぐる、紙をめくる、めくる際の「間」を味わう、時間の中で想像する、思い巡らして何度も戻る――。幼児期の記憶に、これほど大切な時間はない。人間らしさの体験は、紙でないと実現しない。
 希代の存在になるのかな、絵本……。大切にしなくちゃ、絵本は時間。