Mirror Mirror おとぎ話を上から下から

 なんと愉快で機知に飛んだ詩群だろう! ふつう詩は上の行から読んでいくものだけれども、それを下の行から読み始めたらどうなるのか。おとぎ話をテーマにした詩集絵本"Mirror Mirror: A Book of Reverso Poems"は、一見単純な、けれども斬新な発想を昇華させ、関係者を驚嘆させた。ページをめくると見開きに、それぞれに同じけれど違う詩が2編、鏡に映し出されたかのように並んでいる。
 作者が'reverso'(逆詩?)と命名した詩の遊びは、あとがきによると、愛猫オーガストを描写するこんな言葉の羅列から始まった。変更可能なのは、行頭の大文字使用と句読法のみ。あとはすべて同じ内容を、上から下から読む方向を変えただけである。

A cat
without
a chair:
Incomplete.

 これを下から読み直してみると……

Incomplete:
A chair
without
a cat.

 ねっ、行間の情景ががらりと変わるでしょ。作者はこの遊びを14のおとぎ話に応用して、ひとつのお話をふたつの視点から楽しむ、みごとな言葉の芸術を紡ぎ出した。じっくり読み始めると、まるで万華鏡をのぞいているような、あるいは大きな鏡の向こうを遠く眺めているような、またはカラクリ屋敷にでも迷い込んだような、不思議な気分に浸っている自分がいる。
 これは楽しい! 高学年の詩の授業で、さっそく使えそうだ。
amazon:Marilyn Singer
amazon:Josee Masse

Mirror Mirror: A Book of Reverso Poems

Mirror Mirror: A Book of Reverso Poems

 歌の先生のご自宅で、お雛祭りの昼食会。桜に彩られた松花堂、蛤のお汁、白酒をいただき、夢見心地のひとときだった。これほどまでに美しく華麗な食事を準備されるのは大変だったはず。まごころのこもったお祝いに招いていただき、深謝。