The Quiet Book むしろ疲れた大人たちに贈りたい静かな絵本

 "The Quiet Book"は小さな子ども向けの「おやすみ誘い絵本」なのだけれど、作品全体をおおう渋いトーンと個性豊かな動物たちの表情ゆえに、大人でも癒される人が多いのではないかと直感した絵本だ。
 イラストは鉛筆とカラーインク使用のデジタル処理で、朽葉色、セピア色、鈍色、銀鼠など、ひっそりと沈み、決して表にしゃしゃり出ない色に押さえられている。一見、子どもの明るさを奪ってしまったかのように見えた。けれども人間の本能に迫る「静かなとき」をテーマにすると案外、こういう控えめな色が主役になるものかもしれない。それはページを開いて、すぐに思いなおしたことだった。
 絵本は一ページごとに、子どもにとっての静かな時間を映し出す。どんなときに静かになるものなのだろう。一歩立ち止まり、黙考の時間を与えてくれる絵本でもある。ペロペロキャンディを口にほおばっているときは、もちろん静かにするほかない。お話を読んでもらっているときも、夢中だからそう。泳いでいるときも。「だって、水の中じゃ話せないもん」と娘が説明した。
 ページを追うごとに、それぞれ、自分たちの静かな時間を思い起こす。そうする時間はすでに静かなのであり、絵本は立派に使命を果たしていた。疲れた大人が一番手にしたい絵本かもしれない。
 画家は、あのパンダの人だった。どうりで、色調に納得した。
Little Panda レトロな赤茶色とコロコロパンダ - 絵本手帖
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The Quiet Book

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