Redwoods 異色のノンフィクション絵本

　一風変わったノンフィクション絵本に出会った。冒頭、少年が地下鉄駅のベンチで手にした"Redwoods"はまぎれもなく本書である。ページを開くと、そこには世界一の大高木セコイアについて興味深い事実がたくさん記されていた。セコイアの起源は恐竜の生息したジュラ紀にさかのぼる。高さは１００メートルに及び、樹齢２０００年以上のものもあるという。ということは、ローマ帝国の栄えた頃に発芽した計算だ。タンニンを含む樹皮はカビや病原菌の進入を防ぐのでとにかく強い。火事にも耐えうるというのだから、樹齢への影響がここに証明される。霧に覆われるとその水分で自ら雨を降らせ、まわりにはうっそうとした緑の生態系を形成する。表紙をめくった瞬間から少年はセコイアの森林に入り込み、巨木の姿にどんどん魅せられていった。
　写真や図版で情報提供し事実を羅列するにとどまるノンフィクション絵本と異なり、本書では少年が主人公となりセコイアの秘密に迫る。読者も同様にセコイアの神秘に浸ることができ、この一体感が大きな魅力と言えるだろう。
　少年はニューヨークの街角でセコイアの畏敬を体験するのだが、最後には……。ここはバーバラ・リーマンの"The Red Book (Caldecott Honor Book)"に描かれた帰結のようでもあり、次につながる洒落た終わり方だと思った。このあたり、中表紙にも注目を。
　北カリフォルニアから南オレゴンまで西海岸沿岸に広がったセコイアの森林地帯は開拓期の１８５０年以降、９５パーセントが伐採され、現在は当時の１８パーセントしか残されていない。Richard Preston著作"The Wild Trees: A Story of Passion and Daring"に触発されて制作に挑んだという作者は、本書を通して森林生態系の保護をうったえる。
→赤い本でつながる不思議な出会い - 絵本手帖
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Redwoods

The Wild Trees: A Story of Passion and Daring