City Dog, Country Frog 犬と蛙、美しい四季の物語

 都会からやってきた1匹の飼い犬と、田舎の畔に暮らす蛙。犬に話しかけられた蛙は待っていた友だちがやって来ないので、「きみが友だちになって」とお願いした。こうして2匹は愉快に遊び出す。春にはピョンと跳ね、水しぶきを飛ばし、ゲコゲコと声を鳴らす蛙の遊びを楽しんで、夏にはクンクン匂いをかぎ、投げた棒を追いかけて、ワンワンと吠える犬の遊びを楽しんだ。そして秋。2匹は楽しかった春と夏の日々を振り返る……。
 ほんのりと哀しい余韻の残る絵本で、読後の印象として『葉っぱのフレディ―いのちの旅』を思い浮かべた。明るさにも包まれるのだけれど、何となく切なく、もの悲しい気持ち。四季の移ろいを味わう人なら、きっと誰もがほのかに感じ取る心情だと思う。緑の躍動する輝くばかりの春と夏が去り、木々の葉が黄金色に染まる秋を迎えるあたりから、心のうちにうっすらと、寂寞たる何かが広まっていく。
 四つの季節はそれぞれ章として展開されているのだけれど、秋の一コマはこんな感じで始まった――。美しい四季の移ろいの中で仲良しになった犬くんと蛙さん。元気な犬くんが「今日はなにして遊ぼうか」とたずねると、蛙さんはゆっくりと深い息をついて「わたしはつかれた蛙なんだよ」と答え、それなら……と、思い出遊びの提案をした。2匹は楽しかった日々を振り返り……、そして冬の章。ここから先は読みながらもう見えていた。最後はふたたび「再会の春」を迎え明るい光景が広がるけれど、冬の寂しさがしんみりと心に染み入って哀愁と喪失感に満ちた光景にも思えた。
 犬と蛙の友情を四季の中で描く、美しく、切なく、哀しい、でも希望に満ちたストーリー。森羅万象の輪廻を説く物語は、圧倒的な美しさを湛えるこの水彩でなければ成されなかっただろう。みずみずしい透明感に包まれ、犬くんと蛙さんの交流がさらに浄化されていくというか。2匹の笑顔が、とびきりすてきなんだ。しぐさも、その姿も。
 モーさん初の執筆のみの絵本"City Dog, Country Frog"は、期待を裏切らなかった。というより、想像以上の感情の揺さぶりをもたらしてくれた。モーさん、すごいなあ。お笑い路線だけじゃない、深さを携えた創作力に脱帽だった。
 楽しみにしていたのにずっと机の上に置きっぱなしで、先に読んだのは娘のほうだった。彼女は事象をそのまま受け取っていたけれど、大人になって読むと、きっと、この絵本の深さが身に染みて涙が止まらないと思う。
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City Dog, Country Frog

City Dog, Country Frog