The Pirate of Kindergarten 複視(diplopia)の女の子の物語

 ジニーはまわりのものが二重に見え、それが原因で机や椅子にぶつかってころんだりする。大好きな本は、鼻をページにこすりつけるようにして目を近づけないとしっかり見えない。片目で見れば、ちゃんとひとつに見えるのに。うさぎの絵を切り抜くときは、耳がいくつにも見えて、3つ耳のうさぎを切り抜いた。先生は「個性的!」ってほめてくれたけど、みんなのように切れないからフラストレーションだってたまってしまう。目のいたずらが始まって、ゆらゆらものがふたつに見えることは、ジニーにとっては普通のこと。でもある日、視力検査でジニーは複視であることを告げられる。手術は必要ないので、目の訓練で治していくことになった。
 "The Pirate of Kindergarten (Richard Jackson Books (Atheneum Hardcover))"は、子どもの頃、複視だった作者の体験記である。読んでいて思い出したのは、2年生の男の子Sのことだった。ハサミを使って、まっすぐに線が切れない。分数カードを切り抜く作業で、長方形のカードがどんどん小さくなってしまい、二分の一も、三分の一も、まったく形を成さなくなってしまった。bとd、pとqの違いが曖昧。12なのか、21なのか、今でも迷ってしまう。発達に関していろいろテストを受けているが、視力の問題もあるのかもしれない。ADDであり、学校区は今しばらく見守る姿勢でいる。ジニーのようにすぐ原因が突き止められるといいのに。でも、そこが難しい。何度も何度もテストを繰り返して、様子を見ながら状態をとらえていく。
 タイトルは、アイ・パッチをしているから海賊なのだ。本作を読んで、まわりの大人の理解がどれほど大切か思い知らされた。子どもは何も知らないので、それが普通だと素直に思い込んでいる。子どもの姿を通して、内側で何が起きているのか、察することのできる広く深い目が欲しいと思った。
amazon:George Ella Lyon
amazon:Lynne Avril

The Pirate of Kindergarten (Richard Jackson Books (Atheneum Hardcover))

The Pirate of Kindergarten (Richard Jackson Books (Atheneum Hardcover))