Flora's Very Windy Day 秋空が恋しくなる絵本

 行く夏のなごりを惜しむ中、"Flora's Very Windy Day"のような絵本を読んでしまうと、知らないうちに天高く馬肥ゆ秋を求めている。単に秋が主題の絵本ではなく、主人公の女の子フローラと小さな弟クリスピンのちっちゃな確執も、兄弟ものとしてよく取り上げられるテーマでもあるにかかわらず、巧みな構想で表現しているのだった。
 弟クリスピンのせいでお絵かきを台無しにされてしまったフローラ。不満顔の彼女を見たお母さんは、外遊びを促した。お気に入りの赤い長靴をはけば、どんな冒険もへっちゃら。フローラはさっそく身支度を整えて、紫の長靴をはいた弟といっしょに戸外に出た。ところが、ふたりで秋風に吹かれているうちに、小さなクリスピンが風にさらわれてしまったから、たいへん! あわてて重たい長靴を脱ぎ捨て、コートをはらませると、フローラも強引な風に乗っていた。クリススピンのところまで吹かれたら、弟の手をぎゅっとつかみ、目を閉じて、ここからはやく抜け出せますようにと願いごとをかけてみると……。
 この後、ふたりの遭遇する冒険が、すてきだった。子どもだったら夢見心地でファンタジーに浸れる場面が続く。トンボ、スズメ、虹、雲、ワシ、月、そして風……に出会うたび、「あのちいさな男の子を、くださいな」と尋ねられても、フローラは「この子は、わたしの弟よ。おうちにつれて帰るところなの」――。
 作者の力量に感服。イラストも、澄んだ秋風がこちらに吹きはじめるかのように、さわやかで、透明感があり、よかった。著名コンビ同士なので、納得といえば納得の仕上がりなのかもしれない。最後の、チョコレートチップ・クッキーを食べる場面、笑顔があってもよかったかなとは思うけれど。
 いずれにしても、この秋、おすすめの一冊。
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Flora's Very Windy Day

Flora's Very Windy Day