Mirror 初期の頃の作品

 右ページ下に、うちひしがれた少女がひとり。ページをめくると、左ページ下に分身が現れて、お互いビックリ、顔を見合わせる。ここからにらめっこをしたり、飛び跳ねたり、戯れの時空が生まれ、うれしくて、調子に乗りすぎ、ぶつかり合った後、空白の時間が流れ……。この後、少女たちは鏡合わせの姿ではなく、ふたりの姿になり別々のしぐさで動きはじめる。これが何を意味するのか。まっしろな無言の空間で、読者は想いを巡らさずにはいられない。鏡は最後に割れてしまうのだけれど、割れる側が右側で、あれ? 現実の少女と逆の位置関係ではなかったかと謎に包まれてしまうのだ。つまり、最初にうちひしがれていたのは、虚像の少女だったのか。 
 スージー・リーの"Mirror"を手にして、ふたたび彼女のアート感性に魅了された。縦長の版を左右、鏡に見立てた絵本は、コピーライトが2003年。イタリアで出版されたようで、初期の頃の作品と察した。"Wave"や"Shadow"への伏線は、すべてこの鏡の絵本に表れている。余白使い、黒とカラーの配色、細長サイズの空間使い分けなど、今後もこの文字なしシリーズが続くことを思うとさらに胸が高鳴ってしまう。ちなみにこちらの配色カラーは、黄色がかった明るいオレンジだった。
 小学3年生から5年生向きと表示されていたのだけれど、適切だろう。成長する過程での喜び、つまづき、葛藤など、感受性豊かな年代の心模様が描かれている。中学生、高校生、大人も享受できるものがある。
Shadow ……やはり予想どおりの傑作 - 絵本手帖
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