There's Going to be a Baby 不朽の名作絵本になるはず

 ジョン・バーニンガムとヘレン・オクセンバリーという英国絵本界の最強コンビ(ご夫妻)が贈る"There's Going to Be a Baby"(邦訳『あかちゃんがやってくる (こどもプレス)』)を読んだ。本音を言えばバーニンガムの絵が見たかったのだけれど、読んでいるうちにそんなことはどうでもよくなり、最後はあまりの完成度の高さに感動していた。赤ちゃんを迎える絵本として21世紀を代表する名作になるだろう……、と。そう考えると、オクセンバリーのイラストがそこはかとなく1920年代あるいは30年代を想起させるようなレトロな描線を見せていて、過去の不朽の名作を意識していたのか、長い間読んでもらいたい気持ちを控えめに反映しているかのようにも思えた。絵本にしてはずっしりと重く、表紙のフォントも含め、濃淡を使い分けた質感たっぷりの中間色など、新しい時代のクラシック絵本に相応しい体裁だ。
 絵本は、お母さんと小さな男の子の会話でつづられる。「あかちゃんがやってくるのよ」と告げられた男の子は、赤ちゃんに対して素朴な質問を投げかける。いつくるの? なまえはなに? もし、おとこのこだったら、こんなことしたい、あんなことも――。会話の中では想像上の赤ちゃんがいろいろな職業を体験する場面が描かれて、ここがとても愉快。ミルクがかった中間色のコマ割りには、半世紀昔のコミックに見られるような粒々の網かけが施されている。不思議な雰囲気をかもすセピア色の描線が、今までのオクセンバリーにはなかった表現にも思え「タンタン」シリーズとかを思い出していた。
 それにしても、母子の交わりが美しい。雪の季節から花咲く春、海辺の夏、紅葉の舞う秋へと、ユーモアに満ちたあたたかな会話が続く。贈り物を持った男の子がおじいちゃんといっしょにバスで産院へ向かう最後のページもよかった。きっとお父さんはもう赤ちゃんと対面しているかもしれない。父親の姿がどこにも描かれていないけれど、そこが思考の可能性を広げている。
 赤ちゃんを迎える小さな子どもたちに贈りたい絵本。
amazon:John Burningham
amazon:Helen Oxenbury

There's Going to Be a Baby

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