A Sick Day for Amos McGee エイモスさんがかぜをひくと

 読み終わった後、21世紀に"A Sick Day for Amos McGee"(邦訳『エイモスさんがかぜをひくと』)のような絵本の創作が可能なのだと、ただただ感心していました。抑えた色合いと配色、やわらかな輪郭線、動物たちに囲まれた初老の主人公……。それらを眺めていると、60年代ぐらいに出版された名作絵本の再版だと言われても、素直に信じてしまいます。木版画と鉛筆で描かれる作風は、時代を知る人にとっては郷愁のかたまりでしょう。けれどもこの絵本には、それはそれは特別な、稀代の絵本だけが持ち合わせる、最上級の時空が存在しているのです。ページを開いて読み進めると一瞬にして、読者は魔法がかったひとときに引き込まれています。
 市営動物園の動物たちは、いつも心を込めてお世話してくれる飼育係のエイモスさんが大好きです。ある日、エイモスさんが風邪で仕事を休んだので、動物たちはエイモスさんの家を訪ねることにしました。
 とにかくエイモスさんと動物たちとのふれあいが、あたたかくて、愉快で、この絵本の一番の魅力です。やさしいエイモスさんと個性豊かな動物たちの表情を見て、その場の雰囲気がほんわかとこちらに流れるひとときを味わうのが最高の楽しみ方でしょう。
 エイモスさんは生粋の英国人でしょうか、何だかそんな描かれ方です。寝室のベッドとか、キッチンのストーブとか、いずれも古風なものを大切に使い込んでいます。小脇に登場するネズミや小鳥もかわいい。くまのぬいぐるみ、うさぎのスリッパからは、彼の子ども心の反映が見て取れました。
 読者はいつの間にか、大人も子どももハートがほっかほか。そうしてみんな、しあわせな眠りに誘われています。
 作者たちはご夫妻コンビとのこと。今後もおおいに期待してしまいます。
amazon:Philip C. Stead
amazon:Erin E. Stead

A Sick Day for Amos McGee

A Sick Day for Amos McGee