Seasons 版画でめぐる四季の絵本

 とてもユニークな絵本に出会った。"Seasons"は、厚さ約2センチの質感たっぷりの版画絵本。赤、青、黄に緑と茶のみというシンプルな配色が印象的だ。色だけでなく装丁もレトロ感たっぷりで、ページを開くとたちまち1950年代前後ににワープする錯覚に陥る。印刷技術がまた今のように発達していなかった当時、絵本はこういう色数を抑えたイラストが多かった。
 「シーズン」のタイトルどおり、絵本は四季折々の場面を走馬灯のように紹介する。それも、1ページに「ひとつの言葉」と「ひとつの場面」、あるいは「ひとつの対象物」という明快な組み合わせで。冒頭は春夏秋冬の風景がそれぞれ見開きごとに描かれ、冬景色から次にページをめくると……、つぼみ、つばめ、種、芽、葉、あおむし、Tシャツ、すいか、ビーチパラソル、プラム、くるみ、ぶどう、きのこ、傘、紅葉、コート、ひいらぎ、柑橘、スキー選手、スケート、雪解け、急流、春愁、雲、雹、災害、水たまり、楽しみ、洗濯、匂い、くしゃみ……と、次から次へ季節が巡っていくのである。
 言葉とそのイラストは、単純明快そのもの。だからこそ、ページを追って時間が流れるたびに、思考は四季に呼び覚まされ、風景を連想し、新しい季節の到来を祝福している。読者は果たして幾たび、四季のめぐりを味わうのか。紙も薄いコンストラクションペーパー(色画用紙)のようで、ページをめくる指からも懐かしい刺激を受ける。
 作者は最後に「絵本(制作)に夢中になり、ここでふたつの夏、秋、冬、春……を過ごした」と告白している。それほどまでの労作には、確かに実り豊かな収穫があった。なぜなら、ページをめくるだけで読者の想像の翼もはばたきはじめ、この四季を巡る戯れに夢中になっているのだから。絵本は、絵を眺めるもの。そして、想像力を刺激してもらうもの。そんな原点に気づかせてもらった。
 シンプルな体裁とは裏腹に、じわりと夢中になった絵本。もとはフランスの絵本で、こちらは英語版。
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Seasons

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