Snook Alone 孤独とのたたかい

 "Snook Alone"は、ふたつの世界を味わう不思議な絵本だった。
 スヌークはテリア犬。南の島の修道院で、ジェイコブ修道士といっしょにのんびりと暮らしていた。ところがある日、島々のサンゴ礁調査をしていたジェイコブ修道士とともに嵐に出会う。修道士は近隣の大きな島に非難したが、ネズミ捕りに精を出していたスヌークは避難し遅れ、一匹孤島に残されてしまった。ここからが生存をかけた孤独との闘いだ。荒々しい自然に囲まれながらスヌークは、島のさまざまな表情を見る。日々は静かに朝と夜を繰り返し、孤独な犬は修道士を待ち続けた。
 冒頭に言及したふたつの世界とは、しあわせな日常と独りぼっちの窮地である。イラストの描かれ方もこれを意識していたのか。ジェイコブ修道士がコミカルに表現されるので、彼といっしょの場面は喜びや安堵に満ちている。ところが島で過す孤独な場面は、写実画が厳しい自然をあらわに描き出す。暗く、渇いた、極限の世界を。
 文章が極めて詩的である。子ども向けの物語というよりも、大人が詩想や抒情性を味わうための作品という錯覚さえした。語彙も高度なので、小学生なら高学年、文学好きな中高生に向くのではないか。もちろん犬好きさんの。

Snook Alone

Snook Alone

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