Bink & Gollie ユカイでハート・ウォーミングなフレンドシップ・ストーリー

 どういういきさつでディカミロ&マクギー・コンビが生まれたのか知らないけれど、"Bink and Gollie"を読んで確かに今までにないシリーズが生まれた印象を持った。でも、但し書きがたくさん付く。
 まず、これが低学年向き読本とは思えない。時代設定は、あきらかに現代。でも、背高のっぽのゴリーはツリーハウスを居に構えて都会的でおしゃれな暮らしを送る。小柄で奔放なビンクはそのツリーハウスを下ったところに小さな家を持ち暮らす。二人はどう見ても「ひとり暮らし」の女の子のようなのだけど、これが子どもを読者対象にするとしたら、すごく不自然に映る。「がまくんとかえるくん」女の子版を意識した設定なのだろうか。そうだとしたら擬人化した動物でない限り、現代的なひとり暮らしは子どもの本に似合わない。というか、不思議な印象だ。まあ、ディカミロのことなので、そこが狙い目とも思えるけれど。
 次にキャラクター設定と展開について。ゴリーはパンケーキ、ビンクはピーナッツバター・サンドウィッチが大好物。洗練されたゴリーと自然児そのままのビンク。お話はそんなふたりの会話――これをガールズ・トークと呼んでしまっていいだろうか――で展開する。もちろん性格は正反対。よって、そこから生まれる会話のテンポやズレがけっこう笑いを誘う。でも、ここでもやはり、リーディング・レベルの高い子どもたちなら低学年でも理解するだろうけれど、この会話でいいのだろうかと疑問を抱かずにはいられなかった。ちょっとティーンに足を踏み入れた年代に向きそうな感じなのだ。
 なので、高学年の女の子、それも、フレンドシップでぎくしゃくした関係を持ち始めてしまう一番難しい年頃の女の子向けというのが正直な第一印象だった。つまり、作者たちは意図的にそれを操作していたのかと。このあたり、非常にディカミロらしい視点とも伺える。女の子の理想的な友情を再現した姿が、ビンクとゴリーなのではないか。そう考えると不可思議な設定にも納得がいく。かえってそうしたほうが、読者の年代層からして魅力的に映る。かわいらしくキラキラした「ピンク&ジョリー」ではなくて、個性あふれる「ビンク&ゴリー」と、わざと外したと思えるところも。
 本作は3つの章に分かれ、最初の2章でふたりの性格を描き、最後の3章にディカミロらしく、じんと胸に染みる場面を設けている。キャラクターは正反対、でもふたりの友情は永遠に続くというテーマは、今後も読者の心をつかむだろう。この点はさすがにすごく上手く描かれている。
 洒落た空気が流れているしイラストもコミック風なので、やはりプレ・ティーンから中学生ぐらいの女の子が喜ぶのではないかと思った。小さくても大切な存在、ちょっとしたガールズ・コミックとして。娘は、最後のほんのり辛らつなページが好きと言っていた。

Bink and Gollie

Bink and Gollie

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