Binky to the Rescue ねこ好きさんへの贈りもの

 "Binky to the Rescue (A Binky Adventure)"は、猫好きさんにはたまらないコミカルな絵本だ。ふとっちょ猫ビンキーの生態をコマ割りで描写するコミックのような作品なのだけれど、作風は絵本そのもの。主人公のビンキーがときに擬人化され、独自の冒険に挑む。
 飼い猫の冒険とくるからには、猫のキャラクター性そのものに愛着を覚える光景が続く。この様子が、猫を知る人、少なくともわたしにとっては、たまらなく愉快なのである。蜂の大群との対決、ぬいぐるみのネズミの救出……と、猫の日常に見られる行動を「猫の視点」から描き、ツボをくすぐる冒険ものに仕上げている。
 この味わい深さは何だろう。掘り下げてみると、ビンキーの発する擬音語・擬態語に行き着いた。音の感覚とビンキーのしぐさが、ハート・ウォーミングな笑いを誘うのだ。もちろん、構想、構図もおもしろい。擬人化された猫と、家族に可愛がられる猫――両極の絶妙なスイッチが、ファンタジーと現実を行き来させてくれ、体裁はコミック風でも絵本の特性を最大限に発揮する。
 次回も期待してしまうよ、ビンキー。対象年齢は7歳から10歳と記されているけれど、大人のわたしは十分過ぎるほど楽しんだ。表紙が芝生の緑なので、季節が外れていることには目を瞑り、題字の赤と合わせて、笑いをふりまくクリスマス・プレゼントになりそうだ。娘にも大受け。
 シリーズ一冊目の"Binky the Space Cat (A Binky Adventure)"も、ぜひ読みたい。

Binky to the Rescue (A Binky Adventure)

Binky to the Rescue (A Binky Adventure)

Binky the Space Cat (A Binky Adventure)

Binky the Space Cat (A Binky Adventure)

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