Spork 異文化間に生きる

 おかあさんはスプーン、おとうさんはフォーク。そして生まれたのがぼく、スポーク。丸すぎるからとフォークの仲間に入れてもらえず、尖がりすぎているからとスプーンの仲間に入れてもらえず、スポークの気持ちは沈んでいる。キッチンの世界は、同属意識が強い。ナイフと箸だったり、トングとフォークだったり、たまに違うカップルも生まれるけれど、そういうのはまれなこと。「ぼくってなにものなの?」――。一方になりきって生きようとしたにもかかわらず、結局スポークはスポーク。一人で役目をこなすほかの道具たちに想いを巡らせても、ため息がこぼれるばかりだった。でも、そんなある朝、よごしやさんがやってきて、すべてが変わったんだよ……。
 なんてチャーミングな絵本! カナダの絵本"Spork"は、赤ちゃんが生まれたばかりのカップルに最適の贈り物だ。作者のお母さんは日本人だそうで、スポークの身上は異文化間コミュニケーションの中で育った彼女の気持ちの投影かとも思われた。ご自身の赤ちゃん誕生をきっかけにだんなさんと創作した、記念すべき絵本第1号とのこと。すてき。イラストも味わい深く、洗練されたあたたかいメッセージが伝わってくる。このアート表現だからこそ、120%の魅力が発揮されたと言えるだろう。

Spork

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