Summer Birds: The Butterflies of Maria Merian 蝶々を愛でた女の子

 昆虫や爬虫類は、少なくともわたしの知る限りの米国で、子どもたちに人気のある生き物だ。身近な存在であるし、とくに小さな子どもたちの友だちといったような印象がある。虫関連のハロウィン・コスチュームといえば、赤ちゃんや幼児たちの代名詞みたいなものであるし。
 ところが、昆虫が不吉な存在と認識されていた中世ヨーロッパでは、事情が大きく違った。当時はギリシャ文化・風習の影響で、昆虫類は土から自然発生すると考えられていた。よって昆虫を愛でたりなどすれば魔術使いと見なされ、非常に危険な立場に追いやられる可能性もあった。
 "Summer Birds: The Butterflies of Maria Merian"は、そんな時代に生きた少女マリア・シビラ・メリアンを紹介する。13歳のマリアは蝶々を捕まえて、卵からサナギ、幼虫、成虫に至るまで観察し、その過程を多色使いの絵に描き続けた。見つかれば大事だったろう時代背景にもかかわらず。(画集は後にロシアのピョートル大帝が収集したというから、おもしろいではないか!)1647年生まれの彼女は、女性の地位が低かった時代には稀と思われる南アメリカ旅行も、娘といっしょに敢行している。好奇心が旺盛で、好きなことを追い続けた情熱的な人だったのだろう。
 読みながらふと、『堤中納言物語』の虫愛づる姫のことを思い出していた。古今東西、いつの時代にもいたのだ、まわりがどう反応しようと我が道を進んだ虫の大好きな女の子たち。
 サマー・バードとは当時、夏になるとどこからともなく姿を表す蝶々につけられていたニックネームだそう。
 この画家は地元在住なので、彼女のアート作品は巷でよく見かける。すべて塗りつぶしてこそ生きる民族調モザイクのような画風が魅力。よって白抜きのページが多くて少々残念だった。

Summer Birds: The Butterflies of Maria Merian

Summer Birds: The Butterflies of Maria Merian

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