She Loved Baseball: The Effa Manley Story 女性初、アメリカ野球殿堂入りを果たしたエファ・マンリーの物語

 2006年、女性で初めてアメリカ野球殿堂入りを果たしたエファ・マンリーの伝記絵本。殿堂入りは、夫のエイヴとともにブルックリン・イーグルス(のちにニューアークイーグルス)のオーナーとして黒人野球リーグ(ニグロ・リーグ)の発展に貢献し、選手の地位向上に努めた功績がたたえられたことによる。
 エファはヨーロッパ系だが、黒人の兄弟に囲まれて育ったことで、黒人の地位向上にひじょうに熱心だった。
 この背景を調べてみると、ちょっと複雑だ。(どこで読んだのだっけ……)エファの母親はたしかドイツ‐インド系の人で、夫は黒人だった。が、結婚していたにもかかわらず職場の経営者の子どもを身ごもってしまい、それがエファ。白い肌を持つ新生児から姦通はあきらかで、離婚。その後、母親はふたたび黒人と結婚し、エファのまわりには黒人親族がたくさんいて、黒人文化に精通していたというわけだ。こうして、容姿はヨーロッパ系にもかかわらず、自身は黒人コミュニティで生きる道を選んだ。そのほうが自然だったのであり、いまから見れば時代を先走っていた母親の影響も少なからずはあるだろう。
 エファは球団経営に尽くした。ただ、その熱心さの源は、多く私情にも左右されていたようである。たとえば、お気に入りの選手と関係を持ち……との記述(ウィキペディア)もあり、なんだか複雑だ。親身になって黒人選手の社会的向上を目指した背景には、そんな血の踊る理由もあったのである。だからこそ、社会変革に至るまで情熱的に行動できたのかもしれない。野球が大好きだったのは確かなのだろうけれど、野球より選手が大好きだったのか。そのあたりは表裏一体。
 美しいけれど醜い事実も渦巻く歴史である。もちろん絵本にそんなことは記されていない。

She Loved Baseball: The Effa Manley Story

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