April and Esme Tooth Fairies リアルな妖精たち

 "April and Esme Tooth Fairies"は、非常にボブ・グラハムらしい絵本だった。妖精のおとぎ話を美化せず、日本的に表現すれば「主人公を下町の人情あふれる情景とともに描く」いつもの手法が冴えていた。
 主人公は歯の妖精エイプリルとエスミの姉妹。この歯の妖精一家は高速道のかたわらに住む。排気ガスがもうもうと吹き込み、空き缶やビール瓶がごろごろ転がっているような場所で1691年以来、歯の妖精業を営んでいる。ある日、小さな姉妹たちに仕事の電話がかかってきた。初めてのお客さんはパークヴィルのコーンフラワー・フィールド3番地に住むおばあちゃん。孫息子ダニエルの乳歯が抜けたので、取りに来て欲しいとのことだった。まだ7歳のエイプリルに妖精の仕事がつとまるのか。お父さんもお母さんも半信半疑だったけれど、しんけんなエイプリルとエスミの姿に最後は折れた。みんなで夕食をすませた後、姉妹はコインをあみの袋に入れて出発した。
 星降る夜の飛行、おばあちゃん宅でのアクシデントなどなど、ささやかでドキドキの冒険が重なり、小さな姉妹の姿に胸が熱くなる。これがボブ・グラハム・マジックか。
 今まで夢の中にしか棲んでいなかった歯の妖精の存在が、ぐっと身近に感じられるようになった。
Oscar's Half Birthday オスカーは6か月 - 絵本手帖

April and Esme Tooth Fairies

April and Esme Tooth Fairies

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