Brownie Groundhog and the February Fox グラウンドホッグ・デーのものがたり

 春待つ米国人がけっこう気にしている「グラウンドホッグ・デー」。わたしは渡米するまでこの子どものおまじないのような「ならわし」のことを知らず、春を待つ占いについてほほえましく思ったものだった。リーダーズ英和辞典には、次のように定義されている。

Groundhog('s) Day【米】グラウンドホッグデー《聖燭節(Candlemeas)の2月2日、所により14日;春の到来を占う日で、晴天ならば冬が続き、曇天ならば春が近いと知る》。[この日ウッドチャック(groundhog)が穴を出て、自分の影を見ればさらに6週間の冬ごもりに引き返すとの伝説から;cf.啓蟄(けいちつ)]

 "Brownie Groundhog and the February Fox"は、そんなあるグラウンドホッグデーを描いたもので、季節的な意味合いを理解しているとさらに興味が湧くお話だ。
 しかしながら、この絵本にはもうひとつ作外に、自分にとって驚きのエピソードがあった。
 スペイン人イラストレーター、カーメン・セゴビアの作品は、絵本手帖でも以前、紹介したことがある。彼女のイラストは、ウェブ上のポートフォリオを見てもらえばわかるように、抑えた色合いを基調にした落ち着いた画風が特徴だ。米国デビュー作"The China Doll"もやはり、「絵」が気になって手にした絵本だった。
桃の節句に - 絵本手帖
 2冊目の作品を手にして、ジャケット折り返しを読むと、おもしろい事実が明かされていた。
 雪などめったに降らないバルセロナ滞在のセゴビアはある冬、雪が降らないかと願いながらグラウンドホッグのスケッチを描いた。それをもとにした絵画がボローニャ国際絵本原画展に選ばれ、目にした米国編集者が断固として絵本化を決めたという。つまり、本作は「絵」が先にあり、お話が後から生まれた絵本である。物語にするまでのこのプロセスには、会話をとおしたキャラクターの構築、プロットなどかなり高度な技術が要されるが、ベテラン編集者であればそういうスキルも持ち合わせているのである。
 そう知ってしまうと、思わず再読してみたい気持ちが高まってくる。さしでがましくも、わたしが創作の立場に置かれたなら……などと想像しながら。
 すでに当日は過ぎてしまったけれど、今年の占いはどうだったのだろう。シアトルは現在、氷点下。弥生3月を目前にして、冬に逆戻りの週末だった。

Brownie Groundhog and the February Fox

Brownie Groundhog and the February Fox

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