The Moon パパとおつきみ

 まろやかな光を放つ「月」の存在には、子どもの頃から魅せられてきた。太陽はなかなかその正体が「絵」のように見えず、まともに見つめることもできなくて、ありがたい割によくわからない対象だった気がする。でも、月は違った。見上げれば夜空にくっきり、青空にはうっすら。視覚的な親近感が湧く。しかも形を変えてのお目見えで、模様までついているから、夢中にならずにいられなかった。月のおかげで、どれほどイマジネーションの世界に遊べたことか。
 月関連の絵本に反応して、Robert Louis Stevenson の詩を絵本化した 『The Moon』を読んだ。なるほど、こんな表現の仕方もあったのか。月のイメージを叙情的に描く絵本が多い中、作品は男の子と父親のモダンなお月見風景を描く。それもベッド際で月光に包まれながらのお月見ではない。彼らはジャケットを着込み、小型ボートを走らせ、アウトドア派一家よろしく自然の中で月と対面しようと出かけて行く。生活に即した月とのお付き合いは、子どもの心に焼きつくことだろう。家では赤ちゃんとお母さんがお留守番。これはパパとぼくだけの、特別な夜のお出かけなのだ。
 詩心にうったえて、月を美化したくなるのはわたしだけ? でも、ときにはこんな月の姿もいい。自然とのふれあい、そしてパパと過ごした時間が、月の情景をさらに色濃く胸に刻む。波の音と潮の香に囲まれた月は、まさに当地の月でもあった。(asukab)
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  • パパと過ごした時間が大切

The Moon

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