プリーズ!で遊ぶ絵本『Time to Say "Please"!』

 ラップトップがメールプログラムの不備で再度コンピュータショップに1泊。なので火曜日の朝から水曜日の夕までアクセス不可だったが、火曜日は息子の中学生(6年生)初日だったしちょうどよかった。彼は前夜、髪の毛を丸刈りにして翌朝うれしそうにスクールバスに乗り込んだ。がんばれ〜、新中学生! 娘は新1年生。新しい服を着て、こちらもニコニコ顔で登校した。1週間前ぐらいから2人共そろって「早く学校に戻りたい」と言っていたけれど、これだけ夏休みが長いと――しかも学校から強制される宿題はないこともあり――こういう言葉が出るんだろうなあ。息子も、娘も成長の見られた夏休みだった。
 成長といえば『Knuffle Bunny*1の赤ちゃんトリキシーも成長した。『Time to Say "Please"!』で、その姿にお目にかかれる。この絵本はトイレ・トレーニングの様子を描く『Time To Pee!』の姉妹版ということなのだが、娘とわたしは赤ちゃん時代とプレスクール時代のトリキシーを追って読んでみた。
 「Please.」と「Thank you.」は幼少期に身に付けなければいけない大切な社会的作法である。作品では文章の一語一語をねずみたちの持つプラカードに表記して、「Please.」の大切さをユーモラスに描く。ねずみたちはトリキシーと同様、チョコレートチップ・クッキーが食べたいんだよね。
 うれしいことにカバージャケット裏はボードゲームになっていて、楽しみながら「プリーズ」を身に付けるという趣向。付属のルーレットには「Please!」「excuse me!」「 Thank you!」「 I want that!」の4つが示され、表現を学びながらすごろくのこまを進めることになる。上がりには、大きなチーズのかたまり。いいじゃない、こういう遊びがいっしょになった絵本って! 娘は1年生だけど、まだまだ恥ずかしがって礼儀正しく振舞えないときがある。いいタイミングで出会えた絵本だった。(asukab)

Time to Say

Time to Say "Please"!

四季の絵本手帖『ミトン』

ミトン

ミトン

 アーニャは犬を飼いたくて仕方がありません。友だちエレーナから子犬をもらって家に戻ると、ママから大反対され返してくるようにと叱られました。子犬を返しに行き、アーニャはまた一人ぼっちです。目から流れ落ちた涙を赤い手袋でそっとふき、アーニャは手袋を犬に見立てて遊びはじめました。すると、不思議なことが起こります。手袋が本物の子犬ミトンになったのです。
 子犬と赤い手袋を巡り繰り広げられる、心あたたまる冬のファンタジーです。純粋でいじらしいアーニャと小さな体をいっぱいに使い走り回る子犬のミトンに、子どもは素直に引き込まれていくでしょう。2人の愛くるしさは作品全体を包む温もりとなり、心に溶け込んでいきます。
 真っ白な雪を背景に映し出されるイマジネーションは、切なさと喜びを同時に表しているといえます。ひたむきな気持ちが哀しさからうれしさに変わる結末に、子どもはほっと胸をなで下ろすことでしょう。小さな女の子の夢が描かれた絵本は、作り手の優しさが伝わる美しい物語となって冬のできごとを祝福します。
 赤い小さなミトンのイメージから思わず毛糸を取り出して、編み物をしたい衝動に駆られるかもしれません。(asukab)