四季の絵本手帖『かもさんおとおり』

Make Way for Ducklings (Viking Kestrel picture books)

Make Way for Ducklings (Viking Kestrel picture books)

 かもの夫婦、マラードさんとマラード奥さんコガモを育てるため、ボストンの街に巣を作りました。出産・子育てを控え、新生活の準備に余念のない夫婦の姿に、人間も動物も違いはありません。新しい住人としてやってきたマラード一家の新生活は、家庭のほのぼのとしたすばらしさを街の人々に伝えることになります。
 橋の近くの茂みに巣を作り、生まれたコガモは全部で8羽。「むねがはちきれそうになるほどよろこんだ」夫婦は、忙しい日々を迎えます。子どもは、コガモたちの名前――ジャック、カック、ラック、マック、ナック、ウァック、パック、クァック――を笑顔で唱え、さっそく彼らのあどけない姿を追い始めます。一羽一羽の表情に個性が表れ、どのコガモがどれなのか、大いに気になるところです。
 「ごしんぱいはいりません。こどもをそだてることなら なんでも しっていますから」とは、お母さんとなったマラード奥さんの誇りと自信に満ちた言葉です。マラードさんが巣を留守にする間、ひとりで子育てに大奮闘するのです。泳ぎ方、もぐり方を教えた後は、一列に並んで歩く練習です。コガモたちが全員しっかりお母さんについて回っているかどうか、子どもも気が気ではありません。マラード奥さんが導くコガモの大行進の様子は、子どもを思いやり、尽くす姿は美しいという親子の本質をそのまま表した光景といえ、心を震わせます。(asukab)