四季の絵本手帖『スニッピーとスナッピー』

スニッピーとスナッピー

スニッピーとスナッピー

 スニッピーは女の子の野ねずみ、スナッピーは男の子の野ねずみです。なかよし野ねずみ二匹の兄弟はある日、お母さんの青い毛糸玉を転がしてどこまで行けるか冒険を試みました。行き着くところにはチーズがあるかもしれないと思うと、二匹の心は知らずと弾んでしまいます。版画風白黒のイラストは躍動感に満ちあふれ、なだらかな丘を登って降りる二匹の姿からはワクワクする気持ちが転がり込んでくるようです。「ころんと のぼって、ころんと おりて、のぼって のぼって、また おりて……」の調子は、山越え谷越えの曲線を生かしたイラストの描かれ方にも表れ、子どもは軽やかなリズムとともに体を揺らしながら聴覚、視覚への刺激を楽しみ、イラストを指でなぞりながら触覚をも満足させます。雲の流れ方、野原の広がり方は独特の遠近感を生み出し、さらに先の冒険へと二匹と子どもを導きます。
 そうやって着いたところは、人間の家でした。今までに見たこともない物との遭遇の様子は、ねずみならではの視点で描かれます。憧れのショクリョウダナを目の前にして訪れた危機にはお父さんねずみが登場し、二匹に大切なことを諭すという学びもありました。
 どこかでこんな野ねずみ一家が暮らしていると想像するだけでも心が和みます。お父さんねずみの読む「ねずみしんぶん」には広い世の中のことが書かれていて、ユーモラスなねずみ社会のありようが満喫できます。(asukab)